きのう、バグダッドで宗教行事に参加していた群衆が突然パニック状態となり、約700人が死んだ。その数時間前、行列に迫撃砲が打ち込まれて数人が死んでいたが、「体に爆弾を巻きつけた男が行列に入ってきた」などのデマが飛び、狭い通路や橋の欄干に押し付けられたり、ついには欄干が脱落して、次々に川に落ちたという。700人とはひどい。
  (2日現在、発表は「死者の数900人以上」に修正されている)

「デマを流したのはテロリストだ」などの二次流言も飛び交い始めているというが、狂気の群集心理が引き起こすパニックの怖さを物語る大事故だ。

先々週の土曜日、関東を強めの地震が襲い、電車は軒並み止まった。都心で帰るに帰れなくなった人たちを取材した番組を見た。
私鉄、JR、バスなどを乗り継いで帰宅のコースをそれぞれが考えるが、その路線が動いているのかどうかを誰も知らない。正しい情報をみんながほしがるが、うわさだけが飛び交う。あの程度の地震で多数の「帰宅困難者」が出現したという。近く発生が予想される巨大地震では東京周辺で600万人が帰宅できなくなる、との試算もある。

4年前には明石駅で花火の見物客が押し合いへし合いし、11人が死亡した。きのうのバグダッドもそうだが、このような集団そのものが凶器となる事故で犠牲になるのは圧倒的に女性、子どもが多い。

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(写真:関東大震災時の銀座)

今日は防災の日。82年前の1923年9月1日、関東大震災が発生し、10万人を超える死者・行方不明者が出た。その混乱の中で、朝鮮人が「放火している」、「井戸に毒物を投げ入れている」などのデマが飛び、自警団や警官などにより、多数の朝鮮人が殺された。内務省調査でも500人前後、朝鮮側調査では6000人が犠牲となった。

規模の大きい天災、人災時には、混乱に乗じて故意にデマを流す輩も現れる。恐怖や不安から誤解や想像・推測を招き、それが新たな流言になっていく。何が正しく、どれがウソなのかを正しく判断し、その場で落ち着いた行動をとりたいものだが、さて、「大丈夫」と言い切れる自信はない。災害は必ず訪れる。日ごろから心しておきたい。